「休日は何をしてるんですか?」
美容室や新しい職場の、なんてことのない雑談に良い返しをせねばとドキドキしませんか。
自分のことなのにわからないと、自立していない気がして恥ずかしくなり、さも充実した趣味をもっていそうな、しかも相手が喜びそうなものを探すうちに頭が真っ白になってくる。
いつもなら自分の気持ちがわからないなんて人に相談するほどのことじゃない、と流すことができるのに、たとえば上司だらけの飲み会のあとには思いっきり落ち込んで、空回りした自分を責めることもあるかもしれません。
そうした疲れた夜にはどうしようもなく大きな問題に思えてくるものです。
だからこそ放置せずに焦って答えを出そうとして、さらにネガティブ思考に飲み込まれていく。今回はそんな人に向けた記事を書きます。
言葉になる前の自分の気持ちをどう見つけていけば良いのか、カウンセリング現場の相談例も交えてわかりやすく解説しますね。
先に答えをお伝えすると、自分の気持ちがわからないのは、あなたの周りに合わせる力が高過ぎるからです。
いきなり言葉にしようとしなくて大丈夫。身体の感覚、感情、イメージと順番にたどっていくと、気持ちは少しずつ見えてきます。
自分の気持ちがわからない=好きなことがわからない
自分の気持ちがわかりにくい人でも、経歴や出身地などのデータはスラスラ言える。
でも何を「好き」かを訊かれた途端、相手のリアクションを気にして萎縮してしまう。同じように、何をしたいかという「願望」を聞かれるのもとても苦手なことが多いです。
この好きと願望がわからなくなる状態を「自分の気持ちがわからない」とします。
好きなことや願望がないのではなく、相手が好ましく思いそうな、自分の好きなことがわからない。
特に危険な相手というわけじゃなくても、常に誰かが自分を評価しているような気がして、何を好きかによってその集団から外されてしまうんじゃないかという焦りと恐怖が、自分の気持ちを見えなくしているんですね。
すると雑談を通じて、自分の気持ちのわからなさに直面させられてしまいます。
そんな自分にまた誰かからの評価が当てはまって、自立できていないんじゃないかといった恥ずかしい気持ちに着地してしまいます。
親しい人ほど自分を出せない
一方で、親しい友人や恋人、家族の間でも、自分がどんな気持ちを持っているかで評価されているような気がしてしまうと、より辛い状態が続いてしまいます。
親しいからこそお互いにお互いのことは言わなくても分かるような気がして、それが裏切られると親しさが否定されているような気持ちになるからです。
そうすると、親しい相手が自分の何かを分かってくれないと思った時に、
「言わなきゃわからないでしょ」
「言ってくれればいいのに」
「で、あなたはどうしたいの?」
「なんでもいいって言ったじゃん」
「何を考えてるかわからない」
「本音で話してよ」
という言葉をかけられて、それでも自分の気持ちが分かりにくくなると、果たして相手といることが正解なんだろうか、恋人だったらこの人のことを好きなのだろうか、と悩む時間が増えてくるんですね。
自分の気持ちが分からなくなるというご相談を受ける時、親しい人との関係を続けていいのだろうかという葛藤を抱えた方も少なくありません。
さらに相手がやさしいほど、応えられない自分が申し訳なくなるケースもあります。
自分が「察してちゃんは面倒くさい」と思われていないか、
かといって、察してほしい気持ちがまったくないと言い切る自信もない。
人と人との間にある当たり前の甘えや支え合いを、自分がどうして欲しいのかわからないことによって、誰にも相談できない孤独の中で葛藤してしまうのです。
本音がわからずゴールも見えない
ネット情報やいわゆる自分を変えるための心理本は、自分の本音通りに動けば幸せになれるといった内容であふれています。
本音にアクセスするための瞑想法、散歩、ワークショップなど、数え出せばきりがありません。
目標をたくさん紙に書き出して、書いているうちは気持ち良くなるので、これが本音だと信じて一人になってみると、急にしぼんでしまい、周りの成功談を聞くたびに、だんだん自分がダメな人に思えてきてしまう。
本音を言えるようになったら、どんな自分になるんだろう。
クヨクヨしなくなるのか。
好きな人に囲まれているのか。
趣味に夢中になっているのか。
仕事で成果を出しているのか。
それさえわかれば今の苦しさはなくなるはずなのに、「それ」が見えないから困っているんですよね。
本音がわからないから、ゴールがわからない。
ゴールがないから、本音も出てこない。
答えが出ないまま、ぐるぐる回って苦しくなる。
そのうちあきらめて、でも疲れた夜にまた検索してしまう。
あなたが今ここを読んでいるのも、そんな時間なのかもしれません。
人に合わせて自分が後回しになる
ここで、ひとつ認めておきたいことがあります。
自分の気持ちがわからなくなったあなたは、周りに合わせる力がとても高い人です。
その場の空気を読む。
相手がほしい答えに気づく。
そうせざるを得ない環境の中で、周りに合わせる力を鍛え上げてきたのだと思います。だからこそ、その力を発揮できないときに急に頭が真っ白になる。
自分の気持ちを確かめる時間を削りながら、自分でも知らないうちにずいぶんストイックに生きてきたのです。
例えば、小さい頃に誕生日プレゼントを買ってもらうとき。
欲しいものよりも、安いものを選ぶ。
着たい服よりも喜ばれる服を選ぶ。
親から強い否定や、厳しい評価を受けた場合はもちろん、多忙な両親を幼いころから見ていてなんとなく、自分がそこにいていいのか疑問に思うような経験をすると、自分の気持ちよりも周りの空気を優先することで生き延びようとするのです。
無力な子供にとっては、どんなに大人が「好きなものを買っていいよ」という言葉をかけたとしても、刻み込まれた自分への疑いは自分の無力さと比例して、消えにくくなっていくものなのです。
子どもの頃の親との関係が、今に影響しているのかもと感じた方は、愛着障害かも?と思ったら|よくある行動パターンと克服の第一歩も読んでみてください。
どんなワークも台無しになる理由
理屈で分かっていても消えにくい考え方の癖を書き出してみたり、自分を主語にして感情の言葉を相手に告げてみようなどという解決策は、たくさん出てきますよね。
気持ちを書き出す方法は、紙とペンがあれば手軽に始められるので、よくすすめられているのだと思います。
研究では、146の研究をまとめた分析で効果が確かめられている一方で、その大きさは小さめです。書いた直後には、一時的につらさが増えることもわかっています。
出典:Frattaroli, J. (2006). Experimental disclosure and its moderators: A meta-analysis. Psychological Bulletin, 132(6), 823–865./Smyth, J. M. (1998). Written emotional expression: Effect sizes, outcome types, and moderating variables. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 66(1), 174–184.(どちらも英語の論文です)
ただし、それは環境が整っていたり、頭でわかっていることを行動に移せるほど疲労感がない状態だったりしないと、かえって上手くできず、自分を責めてしまうこともあります。
書き出しがかえってしんどくなる理由は、生きづらいのは言えなかったことが多すぎるから|断じて甘えじゃないでもくわしくお伝えしています。
自分を回復させてあげたい時ですら場の空気を読んで、正しく回復する方法でないとダメだ、という感じで見えない誰かからの評価を気にしてしまうんですね。
こうした経験が積み重なると「自分だけがおかしいのかな」と思えてくる。
違います。
取り組む順番が早かっただけです。
病気じゃないから頼っちゃダメ?
精神的な病気で苦しんでいる人がたくさんいるのに、自分ぐらいの苦しさで誰かを頼りづらい。そもそも何が苦しいのかも、自分の気持ちが分かりにくくて言葉にできない。
こうして、日常ではほんとうに困っているのに、誰にも言わないまま過ぎていきます。
もっと言えば、どこかで「どうせわかってもらえない」という悲しみや諦めに似た気持ちを見て見ぬふりしていることも、カウンセリングの現場では多く見られます。
一人でそのフタを開けてしまうことに耐えられない気持ちを、一緒に丁寧にほどく作業も行っています。
カウンセリングという安全な空間でさえ、言葉に詰まる方のほうが多いぐらいです。
それだけに、いっそ倒れてしまえたほうが自分も休めるし、周りにも伝わるし、手っ取り早いんだよな、という想いが出たっておかしくないと思います。
実際にそこまで赤裸々に言える方はほとんどいませんが、僕自身は自分がしんどいときには不謹慎ながらもそう思っていました。
さて、それではどうすれば良いのか、順番に解説していきます。
いきなり言葉にするのは無理
はっきり言います。自分の想いをいきなり言葉にするのは無理です。
過去の環境が原因で、今に影響を及ぼしているとき、その過去の時点の自分を想像してみてください。
例えば、それが幼稚園の時だったとしたら、いきなり大人が納得する言葉なんて言えませんよね。
赤ちゃんだって言葉から話し始めるわけではありません。
まず身体の感覚があり、動くようになり、感情が育ち、頭の中にイメージを持てるようになって、そのあとでようやく言葉を覚え、そこで初めて自分の気持ちを言葉にできます。
アメリカの心理学者ジェローム・ブルーナーは、子どもが物事をとらえる方法は「動き」「イメージ」「言葉」の順に現れ、それぞれが前の段階をもとに育っていくと述べています。
出典:Bruner, J. S. (1964). The course of cognitive growth. American Psychologist, 19(1), 1–15.(英語の論文です)
もしもあなたが会話の言葉は覚えられても、気持ちを言葉にする段階でつまずいたまま大人になっていたとしたら、どうでしょうか。
気持ちを言葉にすることは、こうした積み重ねの一番上にあるものなんです。
だから「どう思う?」と聞かれて言葉だけ探しても、見つからなくて当たり前なのです。
身体→感情→イメージの順にたどる
身体の感覚から感情が育ってイメージが湧いてくる。
そうであれば、まずは自分が何らかの気持ちを言葉にできないときに、身体のどこが反応しているのかを知る必要があります。そして、その次に、その身体のこわばりがどんな感情を表しているのか。
言えないことを悲しく思っているのか、それともほんとは内心期待して好奇心でわくわくしていそうなのか。
その感情を味わったとき、思わず何かを思い出すことや、その感情を味わった後の自分を想像する働きが、反射的に出てくることがあります。
難しいことを言っているようですが、日常でちょっとイラッとした時に別のイラッとした記憶を思い出してみたり、何だか物事がうまくいっている時はその先もうまくいってくるような気がするっていうことがありますよね。
それと同じです。
自分の気持ちが分からない時には、身体の感覚と感情を味わいながら、浮かんだイメージについて詳しく思い浮かべてあげましょう。
イメージが生まれるときは、大きく2つ。
- 過去のことを思い出すとき
- 未来のことを想像するとき
さっきの「どうなりたいかわからない」は、言葉で答えを出そうとするから止まってしまいます。
ゴールが言えなくても、ふと浮かぶ場面ならあるかもしれません。
僕は床屋さんで希望の髪型を言うのがとても苦手なのですが、その時の身体の感覚は、大抵みぞおちのあたりが固まる感覚があります。
その感覚に意識を向けてあげると、少しほっとした感覚が出てきて、その途端に、以前にオーダーしてうまくいったお店に行けばいいや、といった発想や、千円カットのような流れ作業でどんどん施術してくれるようなところに行けばいいや、というような具体的なイメージが湧いてくるんです。
そのイメージに応えるように、なんとなく身体が軽くなったら、それが自分の気持ちだと思って行動に移します。
また、そこでみぞおちが重くなるときは、その感覚に戻ってあげて、別の案を採用するようにします。
ただ散髪をするだけの日常の小さなことでも、どんな順番で自分の気持ちを知ろうとしてあげればいいのかを知っているだけで、迷いがなくなってきます。
頭であれこれ迷うのではなくて、身体から始まり、感情に行き、イメージへと行く。そしてまた身体に聞いてみる。
こうした繰り返しが、どうしたらいいかわからなくて葛藤する時間を減らしてくれます。
気持ちが浮かんだら、その場で形に
イメージは、生まれたときに形にします。
たとえば先程の散髪の例で言えば、身体がなんとなく軽ければ、その場ですぐに髪を切りに行く。でも、すぐに行動に移せることもそう多くないかもしれません。
だからイメージが浮かんだら、できればその場で書いてみたり、声に出してみたり、言葉という形に変えてしまうほうが、より気持ちを落ち着かせます。
頭の中だけで考えていると、基本的に人は危険を避けようとしちゃうので、危険なことを想像しちゃうんですね。
身体の感覚から順番に寄り添ってアプローチして出てきたイメージが、危険なことの想像からちょっと距離を取ってくれるので、そのイメージが新鮮なうちに形にしておくのです。
イメージの中の自分が不安そうなら、声をかける。
カウンセリング中であれば、カウンセラーが質問しながらイメージに名前をつけたりできますが、一人の時はこうしてセルフカウンセリングしてあげる、つまり言葉で形に変えてあげることが必要です。
受けとめてもらうことが大事
「形にはできたんだけど、それでどうなるの?」
そう思われたかもしれません。
そう、形にしただけですぐに人生の何かが変わるわけではないですよね。
形にしたイメージは、受けとめてもらった実感を持つことで、ようやく自分の気持ちになっていきます。
それはほかの誰かでなくてもいいし、モノや自然、動物など、何でも構わないのですが、それを一人で編み出していくのは難しいことだと思います。
具体的なセラピーをここで書きだしても情報量が多すぎるので、僕は7日間のメールレッスンという形で無料提供しています。
7日間の無料メールレッスンでは、今回の続きとして、形にしたものを抱きしめたり、伝え返したりするセラピーをセルフケアで体験してもらえます。
「何が好き?」と聞かれたときに、いい答えではなく、ふと浮かんだものに気づき、なければないで堂々とできている、そんな日があなたにも増えていきますように。


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