愛着障害があると褒め言葉を素直に受け取れなくなる心理的な理由

何かを褒められても、心のどこかで素直に「ありがとう」と思えない。

そんな感覚が、あなたにもありませんか。

「真面目だね」「いい人だね」と言われるほど、なぜか「都合のいい人として見られているだけかも」というひねくれた解釈が浮かんでくる。

これを性格が冷めているとかひねくれているせいだと思って直そうとすると、実はうまくいかないどころか、悪循環に陥ってしまうことがあります。

この記事では、愛着障害があると褒め言葉を素直に受け取れなくなるのはなぜか、その正体を心理学的な視点から丁寧に解説していきます。

「褒め言葉を素直に受け取れない」を性格のせいにすると悪循環に陥る理由

真面目だね、いい人だねと褒められた瞬間に、素直に受け取れず、「都合のいい人として見られているだけかも」というひねくれた解釈が浮かんでしまう。

だんだんと、嫌な感覚だけが積もっていきます。

これを過去のつらい経験に原因を求めて、「いいように利用されたんだな」「都合よく扱われた、それが傷なんだな」と気づいたとしても、一時的にホッとするだけで、また褒められて嬉しくなるわけではありません。

そして、この状態を自分の性格捉え方の問題だと考えて直そうとすると、最終的に「結局自分が悪いんだ」という悪循環に陥ってしまいます。

一時的に変わった感じがしても、またうまくいかないことがあると失望し、結局また自分の性格に原因を求めてしまう。あなたにも、この繰り返しに心当たりがあるかもしれません。

褒め言葉が届かないのは、愛着障害による脳の”エラー”であることが多い

なぜ、性格を直そうとしても変わらないのでしょうか。

それは、そもそも喜びや幸福感を感じ取ることに対して、愛着障害(愛着に傷)を持っていると、自動的にブロックされてしまうからです。

これは、心を司る脳のエラーであることが非常に多いのに、性格や捉え方だけを変えようとしても、根本的には変わりません。

小さい頃、泣いても叫んでも助けてもらえなかった経験があると、子どもは「自分が重要でないんだ」と受け取ります。

小さな子どもには他に参考になる情報がなく、親は最初に出会う”神様”のような存在です。だからこそ、「自分が悪いに違いない」と思うほうが、まだ安全なのです。

親のことは基本的に愛している、という土台が揺らぐことは、あなたが生きていく足場そのものを失うくらい怖いことだったからです。

「自分を大した存在と思うな」という無言のメッセージの正体

自分が重要じゃないと受け取った子どもは、その分を埋め合わせようと、とにかく努力を頑張ろうと決めます。

けれど、その努力を褒められても、別に嬉しくないんですよね。

なぜなら、根っこにあるのは「自分を大した存在だと思うな」という無言のメッセージだからです。

これは交流分析という心理療法の分野で「禁止令」と呼ばれる、子どもが親との関係の中で無意識に受け取ってしまうメッセージの一種と重なります。グールディング夫妻が整理した禁止令のひとつに「重要であるな」というものがあり、まさにこの無言のメッセージに近いものです。

僕は、こうした背景を持つ人がずっと努力し続ける状態を、「安全で不快な世界」と呼んでいます。

頑張り続けることで生まれる「安全で不快な世界」

努力して頑張っている限りは、ひとまずあなたの存在は安全です。

でも、不快であることがデフォルトになりすぎていて、褒められても「はぁ…」という反応しか出てこない。

例えば3歳、4歳くらいの時にこうしたリアクションを取っていると、周りから「素直じゃないな」「ひねくれてるな」と言われたり、きょうだいと比べられたりします。

「お兄ちゃんは社交的で明るいのに、この子はリアクションがなくてつまらない」というように。

そのぶん勉強を頑張っても、「勉強はできるけど、なんかあの子はなぁ」と言われてしまう。あなたの中にあるインナーチャイルド(小さかった頃のあなた自身)は、そうした幼少期を過ごして大人になっていくと、常に頑張り続けることに焦り続けるようになります。

仕事は頑張れるのに、恋愛や友人関係だとしんどくなる理由

大人になったあなたは、評価基準がある世界では、実は結構うまくやれます。

仕事や社交の場では、頑張ることで安全を維持しようとするため、対人関係に大きな問題は出にくいのです。

けれど、友人付き合いはなんとなく続けていても、「疲れるから嫌なんだよね」という感覚がある。

そして恋人との関係になると、距離が近づけば近づくほど、自分の存在価値をいつも評価されている感覚になってしまい、うまくいきません。

本当は安心したいのに、その安心が得られない怒りや失望——これこそが、実は小さな頃に感じていた怒りや失望と同じものなのです。

でも、両親は絶対的な存在だという小さな頃の気持ちがあるために、自分がその怒りや失望に気づけなかっただけ。

親に向けられなかったこの感情が、今、一番近しい存在である恋人や家族に向かい始めます。小さな頃の我慢が、大人になってから顔を出すという状態です。

自分の喜びを見つけることの難しさと、抜け出す一歩

「褒められても嬉しくない」自分に気づいたとき、ちょっとホッとできたら嬉しいと思います。

素直じゃない、ひねくれているというわけじゃなかったんだ、と。

そのうえで、自分が何を喜ぶのかを見つけたり出会ったりすることが、本来の意味での喜びへの入り口になります。

けれど、これまで見向きもしなかった世界にいきなり「楽しいことをしておいで」と言われても、何をしたらいいのか分からなくなるものです。

無理に探そうとするとかえって苦痛な努力になってしまうので、次のような小さなきっかけを大切にしてみてください。

  • ふとした瞬間に「あれ、嬉しかったな」と思った出来事を、そのまま覚えておくこと
  • 「なんでこんなことのために頑張らないといけないの」という抵抗感が出ても、それ自体を責めないこと
  • 誰かとの会話の中で、「そういえばこれ好きだったな」と思い出す機会を大切にすること

こうした小さな出来事の積み重ねが、行動の基準ではなく、どんな系統のことをあなたが好きだと感じるのかを知るきっかけになっていきます。

まとめ:やみくもに自分を責めることをやめるために

褒められても嬉しくないのは、あなたが冷めているとかひねくれているとか、性格の問題ではありません

頑張っている自分じゃないと重要じゃないんだ」という、幼い頃からの思い込みが関係していたのです。

ハード面である脳の仕組み自体は、自分の意志だけでパカッと開けて直せるものではありません。

けれど、脳は人との関わりの中で変わっていきます。だからこそ、実際に扱えるのはソフト面――人との関わり方、自分自身との関わり方の部分です。

まずは、やみくもに自分を責めることをやめること。

それだけで、褒め言葉への反応が、あなたの本当の喜びを再検討するきっかけに変わっていきます。

心の仕組みがこうしてわかってきても、「じゃあ、実際にどう自分と関わっていけばいいんだろう」と思われたかもしれません。

自分が何に喜びを感じるのかを思い出すワークは、今日からひとりでも少しずつ始められます。

でも、その奥にある「頑張ってる自分じゃないと重要じゃない」という思い込みそのものに向き合っていくのは、一人では難しいと感じられる方も多いと思います。

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褒め言葉を素直に受け取れないあなたを、これ以上責めなくていい。そのことに、少しでもホッとするきっかけになりますように。

なお、こうした「〜してはいけない」という無言のメッセージについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。

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