アダルトチルドレンの行動パターンと克服のすべて

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アダルトチルドレンの克服には自分を守る、癒す、育てるの3ステップが不可欠です。カウンセラーとして相談者さんに向き合うときも、かならずその方にとって、どのステップが必要かを見極めます。

 

この3ステップについては動画(約8分)でわかりやすく解説したのでまずはご覧ください。

 

動画内で触れている3ステップについてまとめると、

守るステップで自分の行動パターンに気づく、

癒すステップで自分の意思を受けとめる、

育てるステップで意思を実現する、

というのが要点です。順番に解説していきます。

アダルトチルドレンの行動パターンとは

アダルトチルドレンは10歳ぐらいまでに身に着けた行動パターンを大人になっても繰り返すことで、生きづらさを感じてしまいます。

大人の自分のなかに、10歳ぐらいまでの子供が成長せずに残っているイメージです。

この行動パターンは両親の愛情を求めるギリギリの選択であることがほとんどのため、友人や同僚、上司などにとっては接しにくいものになってしまうことが特徴です。

アダルトチルドレンに詳しい精神科医の斎藤学(さいとうさとる)氏によると、以下のような行動パターンがあるとされています。

※アダルトチルドレンには一見、正反対のようなタイプがあるため、すべての項目にあてはまることはまずないと思ってください。たとえば、過度に責任感があるか、過度に無責任か、といった感じで極端に違うことがあります。

周囲が期待しているようにふるまおうとする

何もしない完璧主義者である

尊大で誇大的な考え(や妄想)を抱えている

NOが言えない

被害妄想におちいりやすい

表情に乏しい

楽しめない、遊べない

フリをする

環境の変化を嫌う

他人に承認されることを渇望し、さびしがる

自己処罰に嗜癖している

抑うつ的で無力感を訴える。一方で心身症や嗜癖行動に走りやすい

離人感がともないやすい

『アダルト・チルドレンと家族』斎藤学より引用

 

順番に解説していきますね。

アダルトチルドレンは周囲が期待するようにふるまおうとする

アダルトチルドレンは親の期待に応えようと必死です。判断力がまだ十分でない小さな子供は、親に見捨てられると命を落としてしまうため、生存戦略として親の期待に応えるからです。

ただ、家庭内にいる間はどうにかなっても、社会ではそうはいきませんよね。

両親よりずっと多くの人の評価におびえ、完璧にふるまうことなど誰にもできない以上、アダルトチルドレンはいつでも傷ついています。その傷は、命にかかわるぐらいの見捨てられ不安とセットです。

何もしない完璧主義者である

自分の意思ではなく、親の意向を伺う異常、自分に自信を持つことができません。つねに自信がない以上、「これでいい。」という確信が持てずに完璧主義になってしまいます。

するとほかの人から批判されることがむちゃくちゃ怖いのです。完璧でない自分を認めることができないからですね。

そうなると、完璧でない以上は物事に取り組まない、もしくは投げ出す。反対に責任を取りすぎてしまうなど、結局はひとつのことを終わりまでできない(というより終わりがない)状態が続いてしまうのです。

もっとも極端な例がひきこもりの人で、世の中に完璧に認められない以上、外に出られないという、自己評価の低さと批判へのおびえが同居した辛さを味わってしまいます。実は過去の私がそうでした。

完璧でない自分をさらすのが怖くて就職活動ができず、かといって自由に生きることも選べず、3年も家にこもっていたのです。

尊大で誇大的な考え(や妄想)をもっている

上で触れた「就活ができない私」と共通しますが、「自分は優秀で周囲が自分を理解してくれないのだ。」と思い続けないと、本当の姿のからっぽさに耐えられず、えらそうになったり周囲はすべて敵だったりと、極端な考えをしてしまいます。

過去に親にされたことがよみがえり、「この場面でこうされたから今の自分は最悪なのだ。」と、一部の出来事なのに、すべて台無しにされたような不満で頭をいっぱいにされるのもこのためです。

「NO」が言えない

自己評価が低く、人の顔色を気にしてしまうため、NOを言う自信がない状態です。根底には嫌われてしまうことへの不安が強くあり、嫌われたら自分一人ではやっていけない、という恐怖に常におびえています。

被害妄想に陥りやすい

他人が常に敵である、という誇大妄想にとらわれていると、人間関係はいつも油断ならないものととらえてしまい、たとえば前向きな指摘であっても大きな批判ととらえ、傷ついてしまいます。

また、まっさらの自分をさらけだすことを抑圧されてきたことから、いつも誰かに反対された「せいで」自分は生きづらい、という被害妄想に陥りやすいのです。

表情に乏しい

カウンセリングの現場では、特に男性に多い印象です。笑ったり怒ったりすることを回避して、自分の感情を悟られないようにするケースです。逆に女性では、おかしくもないのに笑いながらつらい過去を話す方が多いですね。いずれにしても、そうしないと自分を保っていられない心理が強く働いています。

楽しめない、遊べない/自己処罰、フリをする/

素直で無邪気なこころを、親から強い力で封印された、もしくは家族の空気をよくするために抑圧してきた背景があります。たとえば自分がはしゃぐことで父親の機嫌が悪くなり、母親が責められる光景を見た、などのケースがありますね。

この罪悪感が自分に向くと、期待に応えられない自分を傷つける、つらくても平気なフリをすることで、悪い自分のままでいることとのバランスをとる行為が目立ちます。

こころのなかでは、「自分がこうしたい」という本心を抑えるためだったり、抑えられすぎたこころがエネルギーを出さなくなり、「生きてる価値がない、死ぬべきだ」と死をリアルに想像することで逆に、残されたわずかな生へのエネルギーを沸かせる行為ともみられます。

他人に承認されることを渇望し、さびしがる

自分で自分に生きる価値を見出せないため、他人から求められることを強く望みます。ただ、率直に本心をさらけだすことを封じられているので、言い方が遠回しだったり態度で示そうとしたり、かえって他人をイライラさせて離れさせてしまいます。

それが寂しさを加速させてしまい、より承認を求めるという悪循環に陥るか、世話をしつくすことで相手が無力になり、お互いに離れられない共依存関係へと進むこともあります。

抑うつ的で無力感を訴える。一方で心身症や嗜癖行動に走りやすい

本心通りに動けない期間が長ければ長いほど、無力感があって当然です。

ただ、無力感の回復をインスタントなものに求めてしまいます。出会い系サイトでの安易なセックス、たばこ、お酒、過食などです。ワーカーホリックのように、仕事に没頭する場合もあります。

いずれにしても空っぽの心を手近なもので満たそうとし、時間をかけて愛や友情を「育てる」という発想がなくなってしまっているのです。これには、努力をしてもいつまでも生きづらさが解消されない焦りが影響していると捉えます。

多くのアダルトチルドレンは非常にまじめでストイックなため、遊びや楽しみで生きづらさの解消を求めようとせず、自己啓発や極端な自律(ダイエットや筋トレなど)に取り組みすぎ、癒されないままに自分を責め続けます。

これだけやったのにまだ生きづらいなんてうんざり、といった無気力感を抱えるクライアントは非常に多いです。

離人感がともないやすい

自分が自分でない感じ、現実感がなく、外から自分を見ているような状態を離人感といいます。着ぐるみを着ていて、そこから自分が離れていくような、強烈なパニックを起こすこともあり、その苦痛を和らげるために、見て見ぬふりをします。

これは家庭内でトラウマになる状況があったとき、それを怖がることを許されずに見て見ぬふりをした癖が、大人になっても出てきていると見受けます。

たとえば両親が大ゲンカしている声が怖かった夜、翌朝に「何があったの?」と両親に聞けないこどもが、ケンカなどなかったものとして、重たく胃の中に怖さを沈めるような様子です。

アダルトチルドレンにとってのトラウマとは?

ここまでご説明した行動パターンは、すべてトラウマから自分を守る防衛手段だったといえます。大人ではとらない選択のように、衝動的過ぎたり極端だったりするのは、子供の人生経験では判断力が未熟だからです。

さて、アダルトチルドレンにとってのトラウマとは、いったいどのようなものでしょうか。

ただ単に怖い出来事、というわけではなく、行動パターンを縛るトラウマとなるには「ずっと続くと信じられる安心感が壊れる」という状況があります。

地震などの災害が心にトラウマを残すのは、ずっと続いてきた日常が突如壊れてしまうことに原因があるのです。

怖くても大丈夫という安心感が壊れる

トラウマというと、大きなショックな出来事、というイメージですが、たとえば大災害に遭った人たちの中にも、いつまでも恐怖にとらわれる人もいれば、前向きに復興に取り組む人たちもいます。

この差がアダルトチルドレンのトラウマの理解にとても役立つのです。

両親のケンカを例に挙げると、同じように怖がった子供でも、両親に「昨日はケンカしたの?」と質問できる子供は、トラウマを抱えることなく癒えていきます。

「昨日の夜はごめんね。お母さんとケンカしちゃって、お皿が割れちゃったんだ。もう仲直りするからね、心配ないよ。」

とでも声をかけられれば、両親はケンカしても大丈夫!という安心感がずっと続くからです。

安心感が不安定な場合

ところが、たとえ優しい母親だったとしても、態度が一貫せず、父親の話をするときだけ突然黙り込むなど、こどもに混乱をさせるような態度の場合、ケンカなどの衝撃がなくてもトラウマとなります。

普段は優しくても、いつ地雷を踏むかわからない。不安定な立場に置かれ続けてしまうと、虐待も両親の不仲もないのにアダルトチルドレンの行動パターンをとり、「恵まれた環境で育ったのに社会に適合できない」と自分を責める方がいます。

私のカウンセリングでは「虐待などはなかったのにアダルトチルドレンの自覚があるのはおかしいですか?」といった相談が圧倒的に多いです。

周囲の顔色を過剰に気にしたり、批判されることを極端に怖がったり、トラウマによる行動パターンが両親をとおしてでている状態ですね。

個人的には、家庭環境のトラウマによる行動パターンである以上、アダルトチルドレンは広い意味でとらえ、自覚をして癒しの作業をすることが大切であると捉えています。

自分の意思を受けとめる

トラウマによって自分の意思を抑える癖がある以上、カウンセリングにくるときには何が好きで嫌いか、といったこともわからなくなっている相談者がほとんどです。

そうして何をしても感情が反応せず、何をしても楽しめない状態が続きます。

過干渉な母親に、着る服から部屋の模様替え、進学先までぜんぶ支配されていたり、父親から「だからお前はダメだ」と全否定されるなど、自分の意思を受け止めてもらえる機会が少ない場合です。

特に「好き」ということに関して、自分の意思を話すことすら罪悪感を持っているケースがほとんどで、「あなたは何がしたい?」と聞かれることが苦痛な方が多いんですよね。

だからこそ、まずは何が辛いのかを聞き取りして、嫌いなことや許せないことを洗い出します。その逆に、好きなことが隠れていることがあります。同時に、今起こっている嫌なことから連想して、10歳ぐらいまでの家庭環境で起こっていたトラウマを洗い出す作業にも役立つのです。

こうして自分の意思がどんなトラウマで邪魔をされているかがわかると、どのトラウマを集中的に癒すかがハッキリとわかり、生きづらさの解消につながります。

詳しい方法については動画で解説をしました。

トラウマは幼い自分にとっての防御反応。その防御は今の自分に必要がないことがわかると、次第に自分の意思を受け止めることができるようになるのです。

自分の意思は怒りで抑圧されています

自分の意思がなぜ見えなくなるのか。それは怒ることを許されなかったからです。理不尽な目にあったとしても、怒るのではなく我慢することで自分の気持ちを抑え、親にとってのよいこになろうとしてしまいます。ということは、意図的によいこをやめる時間を作ることが、自分の意思を見つけるきっかけになりえます。

上記の動画の続編で、怒りの出し方の実践編がこちら。

幼少期のトラウマを癒す

幼少期(だいたい10歳くらいまで)のトラウマを癒すことで、ある行動をしようとしたときの緊張感が薄れていきます。たとえば仕事で必要なのに「声をかけて質問する」ことが苦手、ドキドキすることが減ったりするのです。

カウンセリングの現場では、その人が「一人ではない」という安心感を持ち、トラウマになっている出来事を吐き出しきり、当時の怒りや悲しみをちゃんとだすことで、まっさらな感情で出来事と向き合えるように促します。

親にしてほしかった温かいまなざし、こころから受け止めてもらえる言葉がけなど、ご相談者さんの声色、表情やしぐさなど、言葉以外のメッセージも受け取り、に癒しへと導きます。

さらに、セラピー(ワークなど)を通して話すこと以外でも癒しを促します。トラウマを癒すセラピーにはイメージワークと理論ワークとの2種類があります。

イメージワークの場合

トラウマが起こった記憶がある場合は、イメージ上でもう一度、その出来事を体験しながら、当時の自分の気持ちを言葉にして体の外に出すセラピーが一般的です。

ただ、一人で取り組むのはとても危険です。

特に夜中に過去のトラウマがフラッシュバックした時など、生々しく当時の辛さがよみがえることがあります。イメージ療法の本なども多く出回っていますが、一人で取り組む際はマインドフルネス瞑想など、真正面からトラウマと向き合うのは避けるほうが良いでしょう。

また、誰にも見せないと決めたノートなどに怒りの感情を書いていくのも有効です。

何度もつらい過去が張り付いて離れないときは、カウンセリングを受けることも検討してください。

理論ワークの場合

理論的なワークの場合は、自分のトラウマがどういう感情を呼び起こすのかを明らかにします。たとえば人前で話すことがトラウマになっている場合、人前で話す場面で緊張や不安といった感情がでますよね。

でもこれは、人によって違い、成功体験がある人にとってはわくわくするできごとかもしれませんよね。こうして、自分が当たり前とおもっている緊張や不安が、トラウマが引き起こしている錯覚で、変えていくことができる実感を持つことがスタートになります。

トラウマというフィルターを通して感情が変わるなら、フィルターを通さなかったらどう感じるのか、その感情を持つことでメリットやデメリットのバランスはどうかなど、納得を通じて感じ方を変えていきます。

代表的な療法では「認知行動療法」があり、本屋でワークブックが気軽に手に入り、イメージワークのようにトラウマに飲み込まれる危険も少ないため、セルフケアにはオススメです。

こうして癒されたこころは、自然と前向きで現実的な行動が浮かぶようになります。

こどもままの心を大人に育てる

トラウマと向き合い、怒りや悲しみを出し切った後、こころは勝手に幸せへと向かい始めます。この状態ではじめて、自己啓発的なアプローチができるようになるのです。

多くのアダルトチルドレンは、自己肯定感が低く、癒されることに罪悪感をもっているために、最初にこころを育てようとしてしまいます。

社会で上手にふるまえない自分が悪いと決めてしまい、自己啓発書を読んだあげくに結果が出ず、余計にできない自分を責めるようなループです。

アダルトチルドレンにとって、トラウマの原因は自分の意思が我慢で抑えられたこと。ということは、癒しが済んだ段階では、自分の意思に従って行動する。つまりひたすら遊ぶことが成長につながります。

受容的な両親にすっかり安心した子供が、遊びを通じて友人を作り、挑戦を繰り返してできることを増やしていくのと同じです。

最初は大きな海に一人で航海したようで、「遊ぶといっても何をどうすれば?」と戸惑う人がほとんど。それでも「イヤ!」と思うことを我慢しなくなると、仕事もプライベートも意欲的になり、実際に成果もついてき始める人生へ変わります。

幸せになること、楽しむこと、休むことに罪悪感がなくなり、自然とやってみたいことが浮かび、行動量が増えて成長していく。これがアダルトチルドレン克服のゴールだと私は捉えています。

アダルトチルドレン克服のまとめ

アダルトチルドレン克服のポイントは、

  • 行動パターンに気づく
  • トラウマを癒す
  • 遊びを通じて育てる

この順番で取り組むことが大切です。

気づいた行動パターンをレッテルにして、「どうせ自分はアダルトチルドレンだから。」「なんで自分ばっかり苦労しないといけないの?」と捉えているかぎり、生きづらさが変わることはありません。

選びようがない家庭環境が辛かったことを、勇気を出して受け入れ、悲しみや怒りを味わい尽くすこと。

自分の今までの人生が全否定されるようなとても大きな痛みを感じることもありますが、それも実は錯覚です。痛みの最初を怖がって後戻りし、癒される前から自己啓発のような「幸せなゴール」だけを見て、一時的に気分があがったとしても、克服にはつながりません。

怖くて仕方がないからこそ、一人ではなくカウンセラーや信頼できる友人などと向き合うことが大切です。あなたが一人じゃないと思える瞬間が、克服の第一歩となりますように。

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